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[ 中小・ベンチャー ]
(2017/7/7 21:30)
空スペース(東京都小金井市、河島壮介社長、090・9678・9927)が開発した潤滑油のいらないボールベアリング「自律分散式転がり軸受け(ADB)」について、この製品を紹介したネット動画の再生回数が、公開してから約2年で累計128万回を超えた。中小製造業の製品動画で、再生回数がこの水準に達するのは異例という。
河島社長は「一昨年あたりから、いろんな業界の人から、声がけしてもらえるようになった。これを弾みに、たくさんの人たちにADBを使ってほしい」と話し、今後、ADBで取得した特許を生かしてライセンス販売に本腰を入れる考え。同社の製品動画は日本語版、英語版ともに、2015年5月17日から動画共有サイトのユーチューブで公開されている。
ダ・ヴィンチ以来の進化
同社が開発したボールベアリングは保持器を使わないところが特徴だ。一般にボールベアリングは、内輪、外輪、玉、保持器の4部品で構成されるが、河島社長によると、保持器は玉同士を接触させないよう玉と玉の間隔を一定に保って摩擦や摩耗を防ぐ一方で、玉と保持器が摩擦し、滑らかな動きを阻む要因になるという。
ADBは保持器の代わりに、外輪の一部に溝をつくり、玉がその溝を通り過ぎる際の減速と加速を利用して、次に続く玉に接触しない構造にした。これにより、保持器なしでも玉同士が接触せず、さらに「玉と保持器の摩擦を抑える潤滑油も必要としないベアリング」(河島社長)を実現した。
保持器を設計したのはレオナルド・ダ・ヴィンチとの説がある。以来約500年、保持器はベアリングに欠かせないものとして使われてきた。それもあってか、ADBの動画には、世界中からさまざまなコメントが寄せられ、「原理を聞けば簡単だけど、これを思いつくのがすごい」「実証試験の結果が見たい」「信じられない」などと書き込まれている。
(英語版の動画はこちらから)
ADBの量産も視野
空スペースはADBの量産を視野に、生産委託先の開拓に乗り出す。今後、見込まれる自転車向け、スケートボード向けなどの需要拡大に対応する狙いだ。量産化することで単価の値下げにもつなげる。同社では15年以降、国内外から引き合いが増えだし、現在の体制では手が回らなくなっていた。生産パートナーを増やすことで、ゆとりのある製品の供給を目指す。
河島社長によると、「大手メーカーの設備に納品する機会も増えてきた。委託先を増やすことが、リピートオーダーに対応する準備にもなる」という。生産パートナーは、大手企業との結びつきがない中小・ベンチャー企業を念頭に選ぶ方針。ADBを通じて取得した特許(日本、米国、中国で取得済み)を生かし、ライセンス販売で契約する。
同社は16年夏に電子メールのセキュリティ関連システムの開発・販売を手がけるオレンジソフト(東京都品川区)と販売代理店契約を結び、自転車向けのベアリング市場に本格参入した。消費税込みの希望小売価格は、自転車ホイール用のADBで1個当たり1万9440円など。今後、スケートボード向けはじめ、さまざまな分野に売り込んでいく計画だ。
(2017/7/7 21:30)